【特別対談】

お茶イラスト

川根本町発 ローカルギフトが世界の引き合いに変わるまで

ゆずイラスト

お茶ゆずの6次産業最前線 ―

川の霧が立ち上がる山あい、静岡県・川根本町。銘茶「川根茶」の産地として知られています。世界的な抹茶ブームを受けて海外バイヤーの訪問を受ける町。しかし、就農人口が減り、需要を受け止めきれないという、もどかしい現実が起きています。

そんな中、今回は、川根本町で「お茶」と「ゆず」の6次産業最前線で奮闘される、2人の社長に直撃インタビューしました。「なぜ美味しい?」「なぜこの形?」「輸出って何が大変?」「就農の第一歩って?」——会社員が知らない内側を語り尽くしていただきました。(取材/2026年4月)

迫 洋一郎

迫 洋一郎(さこ・よういちろう)

株式会社KAWANEホールディングス社長
川根本町の魅力にひかれて町外から移住した、茶業と観光の仕掛け人。大井川鐵道とコラボし地域の観光推進と“ものづくり文化”にも関わり、「Chabacco®」(※)などで川根の魅力を翻訳する。

浜谷 友子

浜谷 友子(はまたに・ともこ)

株式会社KAWANE SENSE社長
川根本町で育った農薬不使用の川根本町ゆずを加工し、国内外へ届ける“香りのトップランナー”。

(※)Chabaccoは掛川市の株式会社ショータイムの登録商標です。
(取材)丹下 隆之:25年前のバイト時代の恩義で川根本町に5年以上通い続ける法務のボランティアスタッフ。LOVEキャラクターズ株式会社代表。

■ Key Points

  • Chabacco®の勝ち筋は「急須がない時代」にデザインで導線をつくったこと
  • 川根本町ゆずの香りは、標高・寒暖差・霧など環境の厳しさがつくる
  • 農地は格安で借りられる。しかし、まずは体験から
  • 輸出は、品質はもちろん書類も大変。でも、ここを越えた先に世界の市場がある
ゆずの写真 お茶の写真

1. 川根本町は「日本茶」と「ゆず」という日本ならではの農業が中心

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川根本町って来るたびに思うんですが…景色が強い。

川、渓谷、霧、茶畑、そして鉄道。ここ自体がギフトの産地ですよね。

迫

そうですね。川根は「茶の町」としての歴史があるからこそ、そこに旅の味が乗る。

鉄道や温泉も含めて、ギフトづくりには魅力的な要素が詰まっている町です。

浜谷

茶の換金作物として始まったゆずも同じで、ゆずの香りは川根本町の環境そのもの。

山の寒さ、昼夜の寒暖差、霧、空気、水。これが香りを作っています。

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川根本町のゆず粉はフタを開けた瞬間に「え、これ同じ柑橘?」ってなるほど濃厚な香り。ゆずジャムも一口で芳香がいっぱいに広がる。スーパーのゆずと何が違うんですか?

浜谷

ずばり、育つ環境の「厳しさ」です。川根本町は標高200〜600mの山あいで、昼夜の寒暖差が大きい。

川霧もよく出ます。ゆずは寒さから身を守るために皮を厚くして、香り成分を溜め込む。結果、皮が“香りの貯蔵庫”になるんです。

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なるほど!「香りは皮に宿る」ってことですね。

浜谷

そう。しかも香りが強いからこそ、料理の“ちょい足し”が効く。

唐揚げにひと振り、白身魚にひと振り、味噌汁にひと振り。香りが主役になる。

香りが弱いと量が必要ですが、少量で効く川根本町のゆず粉は量も減りづらいので、嬉しいポイントです。

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生のゆずは冬しか持たない。でも加工すると、香りを通年で楽しめる。

迫

ゆずも「ひとつの果物」ではなくて、味を季節で分けています。

青ゆず(未熟果)と黄ゆず(完熟果)では、香りや酸の立ち方が変わるので。

浜谷

青ゆずはキリッとした香りが立つから、調味料や香りづけに向く。黄ゆずは丸みが出て、ジャムやシロップにも合いますね。

果汁・皮・果肉で使い道も違いますよ。といっても、人気の「ゆず粉」は、種以外まるごとを使っています。

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それは攻めてますね。苦味とかどう処理しているのですか?実際に雑味を感じないです。

浜谷

そこが腕の見せどころです(笑)。まるごと使うと、香りも味も立体的になる。

でも同時に、丁寧な処理が必要。乾燥の温度帯、粉の粒度、下処理の手順…この細かい仕事で品質が決まります。

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飲食店の人が「この香り、どうやって作ってる?」って首をひねるのは、工程のこだわりがあったからなんですね。

浜谷

そしてロスも減ります。ゆずは果汁だけ取って他が余ることもある。

まるごと使うと、余りが減る。“種以外まるごと”は単なるロマンじゃない。ロスを減らし、香りと価値を最大化する。重要な商品戦略です。

川根本町のゆず

静岡県特産果樹統計(2022年産)によれば、栽培面積 5.2ha/出荷量 28.3tと、全国1位の高知県の0.3%ほどで規模は大きくないものの、その香りの高さからミシュランシェフの創作意欲を掻き立てるほどのプレミアムクラスを確立しつつある。
お求めはこちら:https://www.yuzukawane.com/

2. お茶と6次産業の最前線

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道の駅「フォーレなかかわね 茶茗舘」のお茶は絶品ですよね。遠くても行く価値がありました。
一煎目の新鮮なお茶の甘さは忘れられません。300円で深く感動しちゃいました。
茶茗舘の写真
浜谷

それはよかったです(笑)。ペットボトルのお茶が当たり前になり、急須がない、または急須があっても普段からお茶を飲まないと、「お茶が渋くなる」ので、「お茶が甘い」というのは現代人にとっては新鮮な感動体験かもしれませんね。

迫

御家庭の急須前提は難しいですね。Chabacco®がスティック状の粉末茶になっているのも、ギフトとして誰に渡してもいいように急須不要を前提にしています。

お湯さえあればOK。旅先でも飲める。

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外箱がインパクト抜群なので、プレゼントした瞬間に場があたたまります。

迫

川根らしいデザイン——大井川鐵道のSLデザイン、風景、町の記憶——をタバコサイズの箱に載せて、川根本町にお越しになった旅の思い出にと。

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ゆるキャン△のデザインもありますよね。静岡県に生まれてくれてありがとうございます、あfろ先生!

迫

ゆるキャン△には弊社も助けられています。本当に茶の品質が高いのに、今は「家に急須がない」「職場に湯呑みがない」「茶葉の扱いが面倒」と言われる。

今は色々な情報があふれていますから。良いものを届け、良いものと知ってもらうには正しい導線が必要な時代です。

浜谷

それは、農産物全般に言えますよね。いい素材を作るだけじゃ届かない。届く形にする。そこまでが仕事。

迫

お茶の売上から農家に入る収入の割合が50年間ほどで半分以下になっているのは有名な話です。もう売上金のほとんどが流通業者の懐に入る。

生産者側で、畑の外に、加工・販売・観光・体験まで含めて一本の線も作ることが重要になっています。

浜谷

生産だけの点ではなく線。私も同じ。“香りのゆず”が、粉になり、ジャムになり、ギフトになり、体験になり、海外の食卓につながる——これが一本の線です。

CHABACCO®

Chabaccoの商品画像

Chabacco®を「地域に愛され、社会に役立つお土産」に育てていきたいと考えています。

Chabacco®の詳しい説明はこちら:https://kawane.chabacco.jp/csr/

お求めはこちら:https://kawane-hd.square.site/

3. 追い風を取りこぼしている現状

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6次産業の線が太くなるほど、雇用も増えるし、担い手も増える。

迫

理論的にはそうですが、就農人口が減っていて現実の見通しは明るくないです。

世界的に抹茶がブームで、川根本町にもヨーロッパなどからバイヤーが訪ねてきますが、受け皿が薄い。

浜谷

海外のバイヤーは、本気で“産地”を探しに来る。でも、畑はすぐ増えない。人もすぐ増えない。

結果として、せっかくの引き合いを「今は対応できません」で終わらせてしまう。逆に人口減で耕作地が年々放棄されているのが現状です。

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もったいない。

浜谷

そうです、すごくもったいない。丹下さんみたいな人が早く川根本町に来て農家やってください。

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自分のような町外の人間が川根本町で就農したい場合、どうすればいいのですか?

浜谷

まずは「体験」からです。いきなり農地を買って移住するなんてリスクが高すぎます。

「農地を引き継ぐ」ことは可能ですが、どこの農地を引き継ぐかが重要です。実際に体を動かしたら、自分に合った農地というものが見えてくるかもしれません。

川根本町には、ゆずの収穫期に「てんだい(お手伝い)」として町外から参加できる仕組みがあります。

迫

お茶も同じです。まずは収穫や草刈りのシーズンに、数日だけ足を運んでみる。

現場のリアルな空気を吸って、泥臭い作業を体験してみる。

浜谷

そこで「農業って楽しい」と思えば次のステップに進めばいいし、「これは自分には無理だ」と気づくのも立派な収穫です。

迫

その通り。撤退ラインを引くためにも体験は大事。農家にならなくても、「あの大変さを知っているファン」として、商品を買ったり周りに勧めてくれたりするだけで、産地にとってはものすごい力になりますから。

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あれこれ将来を考えるよりも、まずはお試しでやってみる、ですか。

浜谷

そう。それに、川根本町の農業を生産者側で盛り上げるには、就農するだけではないです。

特に海外の引き合いは、“すぐ出せる形で準備がある産地”だけが、追い風を売上に変えられます。例えば、定番商品、規格書、英語の説明資料、価格表、ロットの考え方…。

迫

結局、流通業者のマージンの根拠だった業務処理を生産者側が負担しなければならない・・・。

それでもAIによって生産者側で自己完結できるプロセスも増えています。

浜谷

私もDeep Researchを使ってタイ輸出のHACAAP対応など、福岡の事例などが瞬時に出てきて、非常にやりやすくなりました。

4. 「引き合い」を「売上」に変えるには?——外からは見えない“黒字化の工程”

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AI君は便利ですけど、AI君では反映しきれない暗黙知もたくさんありますよね。

たとえば、脱サラで就農を考える人にとって、生きていくために儲かる必要がある。川根本町で就農して「儲かる」、「儲からない」は変数が多すぎてAI君は統計的にもっともらしい反応をするだけで。

迫

先ほどの「海外から問い合わせが来た」という話も、即「儲かる」というわけではないです。

問い合わせが来た瞬間は嬉しい。でも、黒字化までには“橋”がある。外から見えるのは「引き合い」だけ。中ではこういう工程が回ってます。

引き合い→売上→黒字化の“見える化”

  • STEP0:問い合わせ
    「興味ある」「見積りほしい」は売上ではない
  • STEP1:サンプル(コストが先に出る)
    小ロット製造、包材、発送、場合によっては試験・翻訳
  • STEP2:規格書・仕様決め(時間が溶ける)
    原材料、製造工程、アレルゲン、賞味期限、保管条件、表示…
    海外だと英語化、取引先のフォーマット対応
  • STEP3:見積り(利益が残る単価の設計が必要)
    原価+加工+資材+物流+手数料+トラブルバッファ
    最低ロット(MOQ)と納期、支払条件までセットで
  • STEP4:初回受注(ここからが本番)
    初回は想定外が起きる(印刷ミス、輸送遅延、検疫、破損など)
  • STEP5:リピート(黒字化の入口)
    継続供給・品質安定・在庫設計・人員確保
    “売れた”ではなく“回る”が大事
浜谷

加工品も同じです。“売れる商品”と“儲かる商品”は違う。

売れても、原価や手間が重すぎると赤字になる。だから、最初から「どこに価値を置くか」「どこは捨てるか」を決める必要がある。

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インスタで「海外から引き合い!」って見えても、その裏で人が足りなくて、書類で夜が溶けてるのですね・・・。

迫

そう(笑)。だから、脱サラの人ほど「いきなり全力で挑戦しない」設計が重要です。

まずは小さく始める。固定費を背負わない。売り方の型を作ってから投資する。

浜谷

輸出の現実もそうです。品質はもちろんですが「書類と確認とコミュニケーション」が重い。

海外に食品を出すって、国・取引先ごとに確認事項が違います。でも、越えた先は世界です。

加工品輸出のポイント

  • 取引先が求める規格書(原材料、工程、賞味期限、保管)
  • 表示(言語、アレルゲン、栄養成分、原産地表記の出し方)
  • 場合によっては製造環境の衛生管理に関する資料
  • 輸送(温度帯、破損対策、輸送日数、保険)
  • 輸出書類(インボイス等)を含む事務作業
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AIは定型書式が苦手ですから、誤記が大惨事になる書類は専門家レビュー必須ですね。

浜谷

そう。それに海外は「一回通ったからOK」じゃないことも多い。毎回アップデートが必要。

でも逆に言うと、ここを越えて「安心して買える」を作れたら、海外のお客様はちゃんと評価してくれる。“小さな町の誰が作ってるか”まで含めて価値になる。

迫

輸出で強いのは、実は「畑の人」だけじゃない。書類、品質管理、デザイン、翻訳、物流。

そういう裏方が地域に増えると、産地の力が一段上がる。農業って、畑だけの仕事じゃないんです。

5. 推しは推せるときに推せ

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聞いているだけで頭が痛くなってきました。農業も、農業の周辺もやるべきことがたくさんあって、相当難しく思えるのですが。

浜谷

最初から全部をやろうとする必要はないです。まずは体験、その次は短期ですね。農業は、体で分かることが多い。

香り、土、天候、収穫のスピード、選別の地味さ、加工の手間。まずは収穫期に“手伝い”として入ってみる。それだけで見える世界が変わります。

迫

僕も「入口は階段にすべき」だと思ってます。0か100かじゃなくて、段階を作る。

体験は、夢を叶えるためだけじゃなくて、撤退ラインを知るためにも大事です。向いてないと思ったら「ファンとして関わる」も正解。

浜谷

そう。買う、贈る、来る、手伝う。関わり方はいろいろある。その入口を増やせたら、産地は強くなる。

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お二人のエネルギーには圧倒されてしまいます。

迫

もう時間があまり残されていないので。最後の馬鹿力です(笑)。

世界は日本茶に注目している。だからこそ産地は“今”が勝負。でも、人が足りない。かといって一人一人の人生も大事だから、地道に体験から関係人口を増やす。

そして、引き合いを売上に変える“仕組み”を地域で作る。そこに、川根本町の未来があると思います。

浜谷

川根本町のゆずは大量生産はできない。でも、香りで勝てる。

その香りを、食卓に、ギフトに、海外に。そして、次の担い手にも。まずは一回来て、香りを楽しんでほしいです。

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買って美味しい、贈って楽しい、訪れてワクワクする。その先に「関わる」がある。でも、こんな状態がいつまで続くかもわからない。

推しは推せるときに推せ、ですね。今日はありがとうございました!

【編集部より】
座談会に登場した、川根本町の魅力が詰まった商品は以下からご購入いただけます。まずは「香り」と「味わい」から、川根本町のファンになってみませんか?
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